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RIE MIYATA

「Sure feel」を立ち上げた田口敦子ディレクターへのインタビュー

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こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。

「ガリャルダガランテ」に2015-16年秋冬シーズンから新しいブランド「Sure feel(シュア フィール)」が加わりました。このブランドを立ち上げた田口敦子ディレクターはガリャルダガランテのスタート当初から籍を置いていたという長いキャリアの持ち主。満を持してローンチした「Sure feel」について、ディレクター自身の言葉で語ってもらいました。

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Q:ガリャルダガランテの立ち上げメンバーの一員と聞きました。これまでのキャリアを教えてください。

A:最初はパルのセールススタッフからスタートしました。大学を卒業してすぐに入社し、今に至るまでずっとパルでいろいろな仕事をさせてもらいました。ガリャルダガランテではオープンした当初から売り場に立っていました。ショップスタッフから店長、マネージャー、バイヤー、ディレクターといろいろな仕事を経験しました。ディレクターになってからは「ものづくり」への興味を少しずつ強くしていきました。「Sure feel」は自分でデザインする最初のブランドとなります。

ガリャルダガランテから1年半ほど離れていましたが、戻ってくるタイミングで新しいブランドを立ち上げたいとプレゼンテーションしました。ショップスタッフからディレクターまで、一通りの仕事をガリャルダガランテでは経験してきたので、今度は自分のブランドをやりたいと決めていて、自分から進んで提案しました。

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Q:「確かに感じること」という意味合いを持つ「Sure feel」のブランドコンセプトは?

A:「着心地のいい服」ということを意識しています。だから、「FEEL」。着ていて気持ちのいい点が大事だと思うので、天然素材にこだわってつくっています。着たときに生地の肌触りや布のドレープ感、リネンのやさしさなどを感じられるように。服を通して布越しに日々のうつろいや季節の変化などを感じ取れる服というイメージです。

流行を追いかける服よりは、空気をはらんだ、開放的で伸びやかな服をつくっていきたい。自分が本音でどういう服を着ていきたいかと考えて出た結論がこれでした。スタートは2015年9月。2016年春夏で2シーズン目となります。本格的なスタートは16年春夏からです。ガリャルダガランテに加えて、ライフスタイルショップ「LIVETART(リヴェタート)」での取り扱いも決まりました。

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Q:「リヴェタート」のディレクターも兼ねています。リヴェタートでの仕事はSure feelのデザインにもプラスに働いていますか?

ガリャルダガランテのディレクターを務めていた頃から、「いずれリヴェタートをやったらどう?」と誘われていました。もともと料理も器も好きだから、リヴェタートに興味はありました。2015年5月からはリヴェタートのディレクターに就いています。リヴェタートのディレクションとSure feelのデザインという両方の仕事をしています。

A:コレド日本橋内にあるリヴェタートのショップには40代、50代のお客様が多くおいでになります。自分自身もこの世代に年齢の近い大人になり、この年齢ゾーンを意識した服を提案したいと考えるようになりました。天然素材を重視した服をつくろうと決めたのも、自分を含めて、大人の世代にふさわしい服をつくりたかったからです。

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Q:天然素材にこだわるというスタンスについて、もう少し詳しく教えてください。

A:自分がある程度、年齢を重ねてきたというところが大きいですね。素直に自分が好きな服を着たいという気持ちが以前よりも強くなりました。その答えがリネン、コットン、シルクといった天然素材。自分が自然体で着られる服が理想だと考えるようになったんです。むやみに飾り立てない、過剰に装飾的ではない服。そんな服を着たい、つくりたいと思いました。装飾的に着るより、アクセサリーも何もつけずにさらっと着て、その人らしい雰囲気が出せる服にしたい。

着ていて心地のよい服でありたいと思うんです。絶対に天然素材じゃなきゃ嫌だというわけではないのですが、着心地にすぐれている服は大抵が天然素材なので、自然とそういう選択になります。着ているうちに素材のよさが感じられ、徐々に味が出てくるというのは、やはり天然素材ならではでしょう。

素材の質感に加え、ディテールを大切にしています。とりわけこだわっているのは、着たときの見え具合。大人女性の体型に合わせて、気になるところをしっかりカバーできるように仕立てています。シルエットはカッチリした感じではなく、エアリーな雰囲気。ワンピースとブラウスが多くなっていますが、甘くはしていません。素材とパターンは大人向けです。プリントはオリジナル柄を用意しました。

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Q:Sure feelをデザインする際、主にどこからインスピレーションを得ていますか?

A:割と自然からインスピレーションを受けることが多いですね。花の色が好きです。普段の生活の中で出会う、身近な「自然」から着想を得ることがよくあります。道を歩いていて花に見入ってしまうこともしばしば。自然なものが好きなんです。

実家は京都です。京都には30歳まで住んでいました。私の祖父が京都の手描き友禅の先生なんですよ。私が幼い頃から、祖父が描く手書きのお花の絵友禅、京友禅を見て育ちました。そんなことももしかして関係しているのかなとも感じます。

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Q:Sure feelをどんな風に着てもらいたいですか? 着姿のイメージを聞かせてください。

A:「日々を丁寧に」という考えがベースにあるので、ちょっとだけいいものをさりげなく、日常着ライクにまとってもらうようなイメージでしょうか。軽やかに、シンプルめに着てほしいですね。力んではいないのに、着てみると素敵に見える服。着ている人のやさしい空気感になじんで、その人の普段着のワードローブにスッと入っていけたらいいなと。服がやたらと主張するのではなく、着る人のイメージに服が寄り添っていけたらいいと思います。

Sure feelがお客様のイメージに据えているのは、上質志向のいわゆる「アッパーゾーン」です。実際にそういったお客様が多いリヴェタートで取り扱っていて、Sure feelの最初のコレクションの反応がとてもよかったんです。お母様が最初に買い、次に娘さんにも買ってという形で、親子で着てくださる方もいました。そういった本物がわかる層に受け入れてもらえブランドに育てていきたいですね。

私自身がガリャルダガランテの出身なので、そのエッセンスがSure feelには自然と備わっているのかも知れません。大人のお客様が着て、着心地がいいとか、気になる部分がカバーできて、しかもシルエットがきれいと感じていただける服を目指していきます。たくさんのブランドとアイテムが集まったガリャルダガランテのフロアでSure feelはナチュラルな雰囲気を帯びたひとつのピースになれたらいいなと思います。

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■取材を終えて

ちゃきちゃきと元気よく話す姉御肌の田口さんですが、大人のキュートさも感じさせます。彼女のインスタグラム(@atsuko_taguchi)を見てびっくり。お弁当の盛りつけの愛らしさには思わず「カワイイ!」と声をあげてしまいました。「日々を丁寧に」とおっしゃっていた通り、公開している日常写真の多くが素敵なセンスやライフスタイルを物語っています。こういった感覚が服のデザインにも表れていると感じます。単なるナチュラル志向の服ではなく、大人女性の内なるフェミニンがにじみ出ているような印象を受けました。ガリャルダガランテらしいテイストをミックスした、肩肘を張らず、しなやかにおしゃれを楽しむ雰囲気に心惹かれます。田口さんのような暮らしを送っている大人世代にとって共感しやすい服が増えてくるのは、日本のおしゃれ感覚が成熟してきたからこそでしょう。田口さんの思いをうかがって、Sure feelの魅力をガリャルダガランテを通じて広く知ってもらいたいといっそう強く感じました。

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