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RIE MIYATA

LA発「SIMON MILLER(サイモン ミラー)」の魅力 あのボンサイバッグも登場

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こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。

「ガリャルダガランテ」のルミネ新宿店で月替わりのテーマを決めて展開している特設コーナー「セレンディピティ」では10月、ロサンゼルス発のブランド「SIMON MILLER(サイモン ミラー)」の期間限定ストアを開いています。ガランテが1年越しでオファーし、ようやく実現にこぎ着けたプロジェクトです。

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日本の製造技術とアメリカの若いクラフツマンとのコラボレーションをブランドの基盤としています。デニム、レディ・トゥ・ウェア、レザーアクセサリーから構成されるコレクションは自然体でありつつ、洗練されたテイストを帯びています。アメリカ南西部の風景からインスパイアされ、手仕事のぬくもりを感じさせるクリエーションはタイムレスなたたずまい。伸び盛りのデザイナーを支援する「CFDS/ヴォーグ ファッション基金アワード」でファイナリストに選ばれるなど、世界的に高く評価されています。

クリエイティブディレクターはダニエル・コリガン氏とチェルシー・ハンスフォード氏。2008年にメンズのデニムブランドとしてスタートしましたが、14年にメンズとウィメンズのレディ・トゥ・ウェアとバッグが加わり、ライフスタイルブランドとして再出発しました。ウォッシュ加工を施したデニムに定評があります。

今回のセレンディピティでは絨毯(じゅうたん)やボックス(什器)、ハンガーなどを「SIMON MILLER」側が用意。販売用アイテムを送り出すにとどまらない、特別な思い入れとこだわりを注ぎ込んでいます。ディスプレイのディレクションも「SIMON MILLER」が監修。細部まで自分たちで手がけただけあって、ブランドのイメージがしっかり伝わって来ます。

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スペースの奥で流されている映像はニューヨークのショールームで収めたデザイナーへのインタビュー動画。今回の期間限定ストアは、彼らのシグネチャー的なアイテムが集められているうえ、2017-18年秋冬の新作もそろっていて、「SIMON MILLER」の魅力に触れる、またとない機会になっています。

欧米のセレブリティやファッショニスタが愛用しているのは、輪っか状の丸い樹脂製ハンドルがアイキャッチーな「Bonsai(ボンサイ) Bag」。日本の盆栽は世界的なブームが続いていますが、こちらのバッグは小ぶりのサイズが話題を集めましたが、ハンドルが大きいモデルは、ハンドルのサイズがバッグ本体と同じぐらいの大きさで真ん丸という、奇抜でユーモラスなデザイン。Tシャツにジーンズといった飾らない装いも、このバッグを添えるだけでたちまち様になりそう。今回はカーフ、カーフスエード、バッファローの3種類を用意しました。

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ピンクの「Bonsai Bag」は17-18年秋冬コレクションで発表されたニューカラー。この秋冬はレトロやノスタルジーといった、やや懐かしげなムードが盛り上がっていますが、「Bonsai Bag」は全体にどこかクラシックな風情があり、秋冬ルックを落ち着かせてくれそうです。

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バッグの中をのぞいてみると、ここにも細部への目配りが。形を保つための台紙には普通、何ということもないボール紙が使われているものですが、「Bonsai Bag」ではここにもきちんとブランド名が入っています。創り手のきめ細やかな配慮がうかがえます。

「SIMON MILLER」のレザーアイテムは、シンプルでありつつ、こだわりや丁寧さが感じ取れます。全体に革が肉厚でしっとりしていて、愛着を持って使い込んでいけそう。日本の製造技術へのリスペクトを抱くブランドにふさわしく、日本人職人の仕事に通じる、細かいところまで手を抜かない意識が見て取れます。

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デニムは洗いのかけ方に特別なこだわりを持っているのだそうです。「デニムの申し子」とも呼ばれ、メンズでは絶大な人気を誇っています。今回のセレンディピティでは、その定評を実感させるようなクロップト丈のジーンズを企画。腰から下のラインをきれいに見せてくれる、絶妙のシルエットと丈感です。裾のカットオフやディテールもやはり手が込んでいます。しっかりした生地感や丁寧な縫製はぜひ手で触って感じ取ってもらいたいところ。「作品」と呼びたくなる完成度です。

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ニットやスウエットにもオンリーワンの風合いがあります。心地よさとしっかり感が両立していて、何だか気持ちが安らぐ感じ。日本製のニット素材だと聞いて、なるほどと納得。シルエットやこなれ感も文句なしで、写真のコーディネートのようにスウエットとワイドパンツの素直な合わせでも格上のムードに。ミニマルめのつくりですが、素っ気なく見えず、むしろあたたかみが感じられるのは、創り手のマインドゆえでしょう。

カットソー、シャツ、ジャケットなどもそろっています。見た目は派手すぎないのに、クオリティーの高さが自然体のリュクスをまとわせているのが「SIMON MILLER」の持ち味。シャツはそのまま1枚で着てもきちんと感が出ます。ジャケットは袖を少しまくって意外感を出して。

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スウエットの上下そろいはストリートテイストが出がちな、難しいスタイリングですが、こちらはルーズに見えません。ゆるゆるに見せないパーカのシルエットや、腰部分に施したブランドロゴのハンド刺繍などが利いています。パンツのフレア感、裾の切りっぱなし加減もタダモノではない雰囲気を醸し出しました。見慣れたスウエット素材を用いながら、リッチ風味やこなれムードまで帯びさせた「おしゃれスウエット・セットアップ」です。

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マスタードカラーのカットソーを、襟元と袖口からチラリとのぞかせて、小粋なレイヤードに仕上げました。ビッグサイズのイヤーアクセサリーも程よく主張。飾り立ててはいないのに、素材感と色味でこんなにクラス感が出せるという絶好のお手本。素材に妥協しない「SIMON MILLER」のポリシーが伝わって来ます。

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今回のセレンディピティでは、イヤリングやネックレスも豊富に取りそろえています。工業製品のような均整や冷ややかさを遠ざけた、ナチュラルさや手仕事感が印象的なアクセサリーはまるでアート作品のよう。ごてごてとはしていないのに、十分な存在感があります。ストーンとシルバーを組み合わせたイヤリングは片耳だけに添えるタイプ。顔周りに穏やかで朗らかなムードが宿ります。

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期間中に5万円(税抜き)以上お買い上げのお客様には、テーブルの上に置かれた「SIMON MILLER」ロゴ入りのオリジナルバッグをプレゼント(数に限りがあります)。デニム生地でこしらえたバッグはしっかりしたつくりで、実用性もちゃんと備えています。
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壁に映し出されている動画インタビューは「ガリャルダガランテ」がNYの「SIMON MILLER」ショールームに訪れて撮影したオリジナルの映像です。デザイナーの1人であるチェルシーさんが登場して、こんな話を語っています(以下は要約)。

「日本のスタイルはカジュアルでオーバーサイズなシルエットが独特ですよね。洗練されているけれど、リラックスできる快適さがある。私たちもデザインするにあたり、日本の女性のスタイルを参考にすることがあります。日本のファッションは私たちがデザインする過程でとても需要。日本市場にフィットすることはとても大事だと思っています」

「2015年の秋冬からウィメンズのデニムコレクションをスタートしました。もともとメンズラインはあったので、ブランドとして次のステップを探していました。メンズウエアでしていたことをウィメンズにも落とし込みたくて、まずはデニムコレクションからスタート。そしてウィメンズデニムコレクションは成功し、私たちは、日本の素材を使用したウィメンズ向けの既製服ラインもスタートしました」

「デニムの要素を既製服に持ち込もうとしたのが人気を得て、CFDA/ヴォーグのアワードにもノミネートされました。このノミネートが私たちに自信を与えてくれました。そして、誕生したBonsai Bagが成功。16年の秋に初めてフルコレクションを発表したのです」

「私たちは日本人と働くことが好きなんです。働き方がすごく信頼できるし、仕事がとても繊細ですよね。とても洗練されていて、様々なテクスチャーを持っている。そこで私たちは、日本の工場と関係性を築き始め、あるひとつの美しい毛糸を見つけたのです」

「イメージとしてはおしゃれに口うるさくなく、イージーでクールだけれども、洗練されている女性。白いTシャツにオーセンティックなヴィンテージジーンズをはいて、素敵なアクセサリーをつけている。それが基本ですね。私たちはジーンズだけでなく、ほかの既製服も手がけています。そういった女性がドレスアップして、もっとおしゃれを楽しむこともあるでしょうし、もっとお金や時間をかけることもできるでしょう。でも、基本の女性像は、ジーンズと白Tシャツに、靴やバッグ、ジュエリーなど、素敵なアクセサリーを身につけている女性ですね」。

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セレンディピティをぐるっと巡って感じるのは、「SIMON MILLER」の創り手2人が日本に寄せる共感やリスペクトの深さ。「Bonsai Bag」という名前もウィットにあふれています。しかも、表面的なところではなく、素材や職人気質といった、あまり目立たないけれど、日本の本質とも言えそうなところに心を寄せてくれているのは日本人としてうれしくなります。

国境や時代を越えた「クロスオーバー」が次なるトレンドとして注目を集める中、「SIMON MILLER」の提案は一歩先を行きながらも、地に足の着いた頼もしさを感じさせます。2人が心を込めたディスプレーも静かに訴えかけてくるから、ぜひこの機会にルミネ新宿店を訪れて、LAから吹き込むクリエーションの風に包まれてみてください。

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