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RIE MIYATA

2016-17年秋冬「ガリャルダカランテ」展示会リポート

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こんにちは。ファッションジャーナリストの宮田理江です。

いよいよ本格的な夏がやってきて、サマーファッションを思う存分、楽しめる時期になってきました。その一方で夏は賢い秋支度を準備する時期でもあります。そこで今回は恒例の「ガリャルダガランテ」展示会リポート。秋冬シーズンの傾向を先取りでご紹介します。今から流れをつかんで、秋冬トレンドをキャッチしておけば、夏のうちから試して、自分らしくコーディネートを練り上げていけそうです。

昔と違って、最近のトレンドはシーズンごとにがらりと切り替わるのではなく、少しずつムードやアレンジが変化を遂げていきます。だから、トレンドが長期化しているわけです。同時に、あえてトレンドに背を向けるような自分らしい着こなしを求める気分も強まってきました。24時間どんな場面でも使える「シーンフリー」や、性別を超え、男女でシェアできるような「ノージェンダー」、季節に関係なく通年でミックスを組み立てる「シーズンレス」など、これまでの約束事から踏み出す、チャレンジングな試みが広がっているのも近頃の特徴と言えるでしょう。

トレンドの「常識」が揺らぐ中、「ガリャルダカランテ」が掲げている「SPICE OF LIFE」というコンセプトは時代の空気感をしっかりとらえています。上質や洗練といった感覚を大切にしながら、「ありきたり」を遠ざけ、程よく「スパイス」を利かせた装いや暮らしぶりが「SPICE OF LIFE」の意味するところ。今回、ご紹介するルックでもそのエッセンスが感じ取れるはずです。

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私が最初に目を留めたのは、着丈長めのスリーブレスジャケット。パンツとのセットアップで提案されています。袖がない分、スレンダーな印象が強まって見え自然にロールした襟が伸びやかなムードです。その隣はノーカラー(襟なし)のロングコート。ゆったりしたシルエットがジェンダーレスなたたずまい。インナーにはランジェリーライクなキャミソール合わせ、フェミニンなつやめきを忍び込ませています。裾の深い正面スリットも注目の新ディテールです。

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前後や左右でバランスをあえて崩す「アシンメトリー」の演出が大胆に生かされています。向かって右端のパンツは正面と背中側で柄が全く異なります。でも、どちらも正統派の紳士服っぽいモチーフで、品格が漂います。隣のプリーツスカートは左右で丈が段違い。素材の質感も変えてあるトリッキーな仕立て。複数のムードをまとえます。その隣のレーストップスは程よい透け感で、シーズンフリーに着こなせそう。薄物の上からオーバーサイズのアウターを羽織る重ね着にも組み込めるでしょう。向かって左端はどこか懐かしげな紳士服ライクなロングアウター。細く長い「ロング&リーン」の着姿に導いてくれそうです。

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ランジェリーの雰囲気を写し込むアレンジは次の秋冬で勢いづく可能性が大。本物のランジェリーのように秘めやかに着るのでなく、Tシャツやニットの上から重ねて、しっかり「見せる」という点が目新しい。本来は人に見せないはずのランジェリーをあえてトップスの上からオンするという着方が意外感を生みます。これも場面を選ばない「シーンフリー」の着こなし。こちらのレーシーなノースリーブ・トップスは最初から重ね着っぽく仕立ててあるから、1枚で新スタイリングが手に入ります。

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季節のセオリーを崩すような「シーズンレス」の装いも、着姿のバリエーションを広げてくれます。夏に盛り上がった、薄手のコートを羽織るアレンジに続いて、秋冬には逆に春夏の軽快な表情が持ち込まれます。こちらの総レースのトップスは春夏物のような風情ですが、秋冬に向けた新作。スリーブレスの形だから、トップス同士のレイヤードが組み立てられます。秋冬に盛り上がる気配が見えているファーやレザーを上に重ねて、質感の違いを際立たせるコーディネートも大人っぽいムードを深くします。レース特有のやさしげ感や気品を逆手に取って、ハードでマニッシュなアウターと引き合わせるテイストミックスの着こなしを試したくなります。

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メインブランドの「GALLARDAGALANTE」に加えて、5ブランドが登場し、一段と厚みが増してきました。実際にショップを訪れると、切り口や雰囲気がそれぞれに異なる、複数のブランドが互いの持ち味をが引き出し合うような関係が生まれていて、自分の好きなテイストに気づきやすくなったと感じます。

「着心地のいい服」を意識しているという「Sure feel(シュア フィール)」も5ブランドのひとつ。天然素材にこだわって、やさしい肌触りや穏やかなシルエットを提案しています。今回の展示会でもニットのセーターや羽織り物に、持ち前の伸びやかさが感じられました。ボディーラインの気になる部分をさりげなくカバーしてもらえる点でもありがたい、自然体のフォルムです。アシンメトリーのチェック柄スカートも不規則に流れ落ちるような形がアンバランスの美を生んでいます。赤の巻きスカートは斜めに入れたスリットがアイキャッチー。今度の秋冬ではスリット使いも注目ディテールに浮上しそうだから、秋の立ち上がりから取り入れたいところです。

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同じく「ガリャルダガランテ」のインナーブランドとして2016年春夏シーズンからスタートした「myporter(マイポルテ)」です。緻密に計算されたシルエットが、着る人のキャラクターを引き出します。あざとくこしらえるのではなく、さりげないバランスでシンプルめに仕立ててあり、それがかえってエレガンスを薫らせる仕掛け。あくまでも「着る人が主役」という立位置でありながら、程よく個性を引き立ててくれます。ナチュラルな落ち感のある、「ロング&リーン」の大人レイヤードはこのブランドらしい着姿。今度の秋冬は長い着丈のトップスや羽織り物に、ロングボトムスを合わせる「長×長」コーデがもてはやされそう。しんなりした素材感も自然な落ち着きを生んでいます。エイジレスに着やすいのも、こちらのブランドの魅力となっています。

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こちらも「五本柱」ブランドの一角、「FELTRINE(フェルトリーネ)」です。このブランドの強みは素材の上質さ。英国トーマス・メイソン社のシャツ生地、ソルデヴォーロ社(イタリア)のツイードなど、国内外のハイクラス素材にインスピレーションを得て、ファッション上級者も納得するスタイルに導きます。今回の展示会で目立っていたのは、ファーの打ち出し。実は私はこちらのファー物が以前からお気に入り。このコーナーで掲載した、山﨑修ディレクターへのインタビューの取材の際にも「FELTRINE」のファーストールを着ていました(http://www.gallardagalante.com/blog/2016-%E3%80%8C%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%80%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%86%E3%80%8D%E3%82%92%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E5%B1%B1/)。ファーの半袖ブルゾンはこの秋冬に活気づきそういなトレンドを詰め込んだようなつくり。ファー、ブルゾン、半袖と、どの要素もアップカミングな16-17秋冬仕様。個人的にも好みのアイテムです。プリーツスカートやワイドパンツに引き合わせてみたい気分にそそられます。タートルネック・トップスやボウタイ・ブラウスを内側に着て、ムードミックスのレイヤードも楽しめそうです。

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同じく「ガリャルダガランテ」のインナーブランド「The Keys to the Closet(ザ キーズ トゥ ザ クローゼット)」です。名前が示す通り、クローゼットのキーアイテムになってくれるような、着こなしのキーとなるようなアイテムを提案。ずっと着続けたいと思える、流行に左右されない品がそろえられています。こちらのナイトガウンやローブを連想させる、ゆったりシルエットのガウンアウターは、クラシックでありつつ、今の「シーンフリー」トレンドにもなじみます。ボディーラインを意識せず、プレイフルな着姿に仕上げられます。

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ここまではウエアを中心に見てきましたが、ご存じの通り、「ガリャルダガランテ」はバッグや靴も得意としています。こちらのバッグは縁取り付きのツートーンですっきりした見栄え。クラシックなたたずまいは、幅広いコーデにマッチするから、自然と出番が多くなるはず。やや縦長のフォルムは着姿にほっそり感を添えてくれます。かごバッグ風の逆台形フォルムのバッグは、秋冬らしく本体部分をレザーでこしらえ、どっさりのファーをあしらいました。形と素材でシーズンをクロスオーバーさせた演出は、秋冬ルックの「主役」を張るのに十分な主張を宿しています。

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16-17秋冬は服にとどまらず、バッグや靴にもファーが取り入れられ、ファーブームを盛り上げます。とりわけ、シューズはファーの華やかさが生きるアイテム。グラマラスな靴にあしらってもいいのですが、こちらのようにかかとがない、くつろいだ雰囲気のシューズにあしらうと、リッチ感とのどかさが同居します。スリッパやバブーシュ系の靴は春夏のイメージがありますが、シーズンレスの波に乗って秋冬にお引っ越し。ファーとのマリアージュで表情が加わりました。爪先のとがった「ポインテッドトゥ」が復活したのも、来秋冬の変化。アウターで隠れてしまわない靴は、ウインターシーズンの頼れる「脇役」です。

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来シーズンのラインアップを占う展示会リポートはいかがでしたか。今回ご紹介できたのは、ほんの限られた範囲だけで、実際にはもっとたくさんの服、小物、アクセサリーが会場内で披露されていました。秋冬に向けてこれから「ガリャルダガランテ」の店頭には新作アイテムが続々と入荷してくる予定で、今からワクワクします。シンプル志向が影を潜め、装飾的な要素が強まったり、ロマンティックな気分が濃くなったりと、今度の秋冬は割とトレンドに変化の兆しが現れていますが、それらもしっかり落とし込んで、さらに大人女性のこなれた着姿に整えているので、まだ夏の盛りですが、秋物の立ち上がりタイミングを見逃さず、ショップで実際に新たなおしゃれの風向きを感じ取ってみてくださいね。

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