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素材から縫製までこだわりがたくさん詰まった、ガリャルダガランテのモノ作りを伝える連載の第九弾。「長く愛せるワードローブの定番に」と想いを込たアイテムを、素敵なゲストとともに紹介します。

Vol.9 「ホールガーメントのモヘヤニット」

島村 秋冬のはじまりということで、今回はニットのご紹介です。ニットは毎シーズン作っているアイテムですが、今年は毛足の長いものが気分なので、企画段階からモヘアニットを作りたいなとイメージしていました。

川上 ニュアンスのある色合いが素敵ですね。少しグラデーションのようになっているんですか? 着心地もとても良さそう。

島村 そうなんです。日常のシーンではもちろんですが、仕事着としても活躍したらいいなと考えていたので、温もりが感じられる風合いだけど厚すぎないというバランスを目指しました。川上さんは、ニットはお好きですか?

川上 すごく好きです。単に服として惹かれるというのはもちろんのこと、あと、これは職業柄かもしれませんが、どんな素材が採用されていて、どういうアイデアが込められて作られているかなどといった、ものづくりの背景まで含めて気になってしまうんですよね。気に入って手に取った一枚が、そこに込められた作り手さんの想いやストーリーもまた心に響くというものだったとしたら、そのニットとの出会いは着る人にとっての幸せだと思います。私自身のクローゼットにも、もう何年も大事にしているニットがあったりします。

島村 素敵ですね! 着ていくうちに愛着が増すのも、ニットの醍醐味なんだと思います。だからこそ、長く付き合える上質なものを作りたいと思っていました。

川上 実際に、ちょっと手に取って見せていただいてもいいですか?

島村 もちろんです。今回はホールガーメントという技術を採用しているんです。

川上 無縫製のニットを作る技術ですよね。日本が発祥で、確か1995年に生まれた…。

島村 そうです、ご存知ですか?

川上 はい。以前ホールガーメントの技術について取材したことがあったんです。

島村 そうなんですね!

川上 展覧会のリサーチや取材で日本各地のものづくりの現場を尋ねていて、家具やクラフト、衣服など、分野はさまざまですが、これまでにも全国100以上の工場や職人さんのもとを訪ねています。

島村 100以上もですか? 

川上 はい。そこで発見できたのは、伝統的な技術で今を作ることの素晴らしさなんです。こちらのニットも、日本で生まれ培われてきた技術によって、今年らしい現在進行形のスタイルが形作られているというところに、とても魅力を感じています。

川上 よく海外で日本のプロダクトに関するお話をさせていただく機会があるのですが、「日本のデザインの特徴は?」という質問を受けることがあります。私は、進歩的なテクノロジーを取り入れていて、同時に人間の根源に迫っているというのが特徴だと思っています。ニットというのは、そこにぴったりと当てはまるのではないでしょうか。ホールガーメントのニットは機械編みで作られていますが、出来上がりは手作りのようなふんわりとした風合いや温かなムードを残していて、そこが着る人を幸せな気持ちにするのではないか、と。

島村 そうですね。風合いに関してはモヘアということもあって、編み地の仕上がりも何度か調整しました。なるべく柔らかさを生かせるように。

川上 このモヘア糸も特別なものですか?

島村 キッドモヘアという、通常のモヘアよりも細く長い糸なんです。この繊細なフワフワ感を生かすために、甘めに編んであるんです。

写真(左・右):21_21 DESIGN SIGHT企画展「活動のデザイン展」会場風景
(photo:吉村 昌也)

川上 今回のお話を伺いながら、以前に展覧会ディレクターを務めた「21_21 DESIGN SIGHT」企画展「活動のデザイン展」で、セーターを作品として紹介したことを思い浮かべていました。ロッテルダム在住のロースさんという女性が、60年以上も手編みで作り続けてきた500枚以上のセーターが発見されたことをきっかけに、その行為を讃えると同時に未来に伝えようとするプロジェクトを取り上げたものだったのですが、来場者の中には、涙していらっしゃる方もいて、ニットそのものにも人を幸せにするパワーがあると感じましたね。懐かしい気持ちになったり、優しい気持ちになったり……。柔らかな肌触りや誰かの手の温もりを感じさせる風合いが、人間に刻み込まれている幸せの記憶をくすぐるのでしょうか。ニットという言葉の響きだけでも、気持ちが和むようです。

島村 わかります! 思わず柔らかい肌触りを想像してしまうというか。

川上 作り手さんの想いが詰まっていて、色もデザインも素敵なニットに出会えることは、寒い季節ならではの幸せですね。いつまでも大事に着たい、とっておきの一枚になりそうですね。

日常を贅沢にしてくれる、モヘアの魅力

軽い着心地と、エレガントで深みのあるニュアンスカラー。
オレンジとラベンダーの2色でご用意したモヘアニットは、凹凸の表情が生きた片あぜ編み。素材は上質なキットモヘアにハリ感を出すナイロンをほんの少し加えることで、ほどよいボリュームを持たせて仕上げています。
できるだけ長いシーズン着ていただきたいから、厚手すぎず薄手すぎず。オフィス着としてもふさわしいバランスに仕上げてあります。

モヘアニット各 ¥16,800(+TAX)

ホールガーメントは、一枚を丸ごと編み上げていく技術。袖や身頃を別々に編んで、最後に縫製するニットとは違い、継ぎ目ができないのが特徴。そのため、シルエットが美しく動きやすさも抜群の仕上がりに。

モヘアの中でも、毛足が細く長く、そして光沢感もひと際美しいキッドモヘア。この魅力を最大限に生かすべく、甘めに編んであります。着た時の印象は、繊細で軽やか。エレガントに着こなしていただけます。

川上 典李子(かわかみ のりこ)
デザインジャーナリスト、「21_21 DESIGN SIGHT」アソシエイトディレクター。デザイン誌『AXIS』を経て、現在はフリーランスのジャーナリスト、エディターとして国内外で活躍。対話の中に登場した“ロースさんのセーター”は、スウェーデン在住のキュレーター、横山いくこさんと共にディレクションした「活動のデザイン展」(2014年)に出展した作品のひとつ。556枚のセーターを収めた本やフラッシュモブの映像(下記URL参照)とともにセーターを展示販売。大きな反響を得た。http://www.youtube.com/watch?v=Pul1Ja8gWBg

21_21 DESIGN SIGHT  http://www.2121designsight.jp/

(撮影協力)
ukafe(ウカフェ)
東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン
ガレリア2F ビューティ&ヘルスケアフロア
営業時間11:00~23:00
TEL:03-6438-9920
URL:http://ukafe.info/



Photo 野田祐一郎

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